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そうした「勘」の持つ意味を熟知する指揮官は、悩む部下に軽々しく「頑張れ」とは言わない。「何を重点に、どう行動すれば良い結果が得られるのか。いま、不足しているものは何か」という方法論を具体的に説かなければ意味がないからだ。良い結果が出ない原因を「部下の頑張りが足りない」などと言い訳する指揮官は、方法論を持ち合わせていない自分の弱さを露呈しているようなものである。
「勘」や「頑張り」は組織を強くする。リーダーはそれらの裏にある合理性に目を向け、自分の方法論に置き換える努力を怠ってはならないのである。
日本のプロ野球の監督は、試合が終わった後にコーチを集めるとき、自分の意見を言いっ放しにしていることが多い。
監督は「今日は打撃が弱かったね」「今日は守備がいまひとつだったな」などと一方的に言うだけだ。コーチはそれを聞いても、「そうですね」と答えるだけで、すぐに解散してしまう。
これでは進歩がない。
コーチに「そうですね」と答えさせるだけの会議には意味がない。だいたい大勢を集めて話をしても、そこにはお互い遠慮があるはずだ。これではチームの問題点を明らかにすることはできない。
コーチ一人ひとりの口から状況の分析、そして意見をしっかり引き出してこそ、今日の反省を明日に生かすことができる。これができないならば、話をしても無駄だ。
こんなとき、大リーグの監督はどうするか。打撃に問題があったと考えれば打撃コーチを、守備に問題があったと考えれば守備コーチを呼び出す。そして、一対一でとことん話し合う。部屋に鍵をかけて、強い言葉も口にする。
「おれはこういうつもりで野球をやっている。おれの目標はこうだ。それに協力してくれ。それについて、お前はどんな力が発揮できるのか」。自分で語るだけでなく、相手にも意見を言わせ、徹底的に話し合う。
大リーグに比べて、日本の野球界は監督がコーチとしっかり向き合う姿勢が欠けている。このため、周りから意見を引き出せず、監督が一人で考えてやっていくしかなくなるケースが多いのだ。
日本では、人気のあった選手が監督になるのが当たり前で、気の強い人が多い。そういう監督の下には「そうですね」としか言えないイエスマンのコーチばかりがそろってしまう。
イエスマンのコーチは、「監督に呼ばれたからチームに来て、言われた通りやっているまで」という考え方になりがちだ。そこには主体性、責任感が生まれにくく、負けても自分の非にはなかなか気づかない。
だが、監督の能力は限られている。チームにイエスマンのコーチしかいなければ、選手の起用法などで最適の判断をすることができず、チームとしての力を引き出せない。それでは勝つことはできない。
巨人の川上哲治さんは現役時代、打撃が得意だったが、守備が下手だった。彼は自分でそのことを分かっていた。だから監督に就任した後、牧野茂さんをコーチに迎えた。牧野さんは決してイエスマンでなく、当時の巨人を鋭く批評していた。
川上さんは牧野さんに自分にないものを求め、守備の戦略を考えさせた。そして試合中、牧野さんに絶えず質問を繰り返し、牧野さんがそれに答え続けた。こうして川上さんは監督としての実力を伸ばした。すると牧野さんも同じままではいられず、常に新しい戦略を立てた。これこそが監督とコーチの理想的な関係だと思う。
目標を伝え、自分にない考え方を周囲から引き出す。イエスマンを周囲に置くのでなく、むしろ自分に文句を言ってくるような人の力を伸ばす。これこそが、優れた監督の力だ。チームに“ボロコーチ”しかいないのは、監督に力がないということにほかならない。部下に自分にたて突いてくる者がいないという経営者は、そのことをよく考えてみるべきだ。
大抵の場合、それはいつしか、「それなりにはやってくれてはいるが、なぜもう少し頑張れないのか」という愚痴に近い話になる。その原因について尋ねてみると、「最近の若者は甘やかされて育ったからだ」とか、「昔は生きるのに必死だったのに、今の連中ときたら……」とか、どこかで聞いたようなセリフばかりが返ってくる。そんなセリフを聞くとき、私は、肝心な視点が抜け落ちているのではないかと思う。
経営者にはぜひ、「この新人はもともと無気力だったわけではないかもしれない」と考えてほしいのだ。たとえ、どのように立派な会社であろうと、「組織の側に彼らを無気力にさせてしまう原因があるのでは?」と疑うべきだと私は思う。
何も新人教育のやり方や研修制度の有無などを言っているのではない。もっと本質的な部分で、新人たちに対して、「こんな組織でいくら頑張ってもダメだ」と思わせる悪因があるかもしれないのだ。
「若者の無気力さ」を、世代の違いや社会のせいにして片付けてしまうのは簡単だ。しかし、それでは来年もまた、同じ愚痴をこぼすことになりかねない。
ベンチコーチに高を置いたのがその証拠です。
この言葉、早速メモさせて頂きました。
すごくよくわかりますね。
自分の場合は中間の立場ですので、どちらの立場からもこの言葉の深みを感じます。
> 多分、カープのことでしょうw
> ベンチコーチに高を置いたのがその証拠です。
そうですよね・・・恥ずかしくないのか?と思います・・・本気で。
コメントありがとうございました。
> >経営者にはぜひ、「この新人はもともと無気力だったわけではないかもしれない」と考えてほしいのだ。
>
> この言葉、早速メモさせて頂きました。
> すごくよくわかりますね。
> 自分の場合は中間の立場ですので、どちらの立場からもこの言葉の深みを感じます。
私も考え方を変えないといけないと思いましたw
相手のせいにしている時点で、こちらの成長は無いんですよね。
すぐ忘れてしまうのですが・・・(苦笑)
コメントありがとうございました。